最新醫學 71巻 11号 
特集 急性リンパ性白血病(ALL)の最新治療戦略


要  旨


座談会
 急性リンパ性白血病 ―Loss toxic,More effective―

豊橋医療センター      水田 秀一
岡山大学          近藤 英生
久留米大学         長藤 宏司 (司会)

 座談会の内容
 ・AYA世代のALL治療
 ・Ph陽性ALLの治療
 ・高齢者に対する治療 など
 
   近藤先生       長藤先生       水田先生

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●基礎
B-ALLにおける白血病幹細胞2016

菊繁 吉謙*
* 九州大学大学院医学研究院応用病態修復学

要  旨
 急性リンパ性白血病(ALL)は,未分化なリンパ芽球のクローナルな増殖を来す造血器腫瘍である.急性骨髄性白血病においては,白血病幹細胞と呼ばれる少数の幹細胞様活性を有する細胞集団が同定され,疾患の理解が飛躍的に高まった.本稿では,ALL における白血病幹細胞研究のこれまでの経過について考察したい.
キーワード
急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、白血病幹細胞

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●基礎
FAB分類から WHO 分類への変遷 ―ALLを中心に―

阿南 建一*
* 福岡大学医学部腫瘍血液感染症内科学

要  旨
 造血器腫瘍の分類は,光学顕微鏡的手法を掲げたFAB分類(1976)に始まり,その後,免疫学的・分子生物学的手法を取り込んだMIC分類(1986)が登場し,さらに染色体・遺伝子検査を要としたWHO分類(2001,2008,2016)に継承され,今や遺伝子異常の解析に迫った分類が求められるようになってきた.本稿ではALLを中心に,FAB分類が目指したこと,WHO分類が求めたことについて追求してみたい.

キーワード
FAB分類/MIC分類、WHO分類、急性リンパ性白血病(ALL)、小児がん・白血病研究グループ(CCLSG)、日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)

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●基礎
ALLの分子病態に関する最新の知見

玉井 勇人*
* 日本医科大学血液内科 講師

要  旨
 ALLは,化学療法の進歩,造血幹細胞移植,分子標的薬の出現により予後が近年大幅に改善している.ALLは近年のゲノム解析技術の進歩により,詳細な分子病態の解析や分類がなされるようになってきた.分子病態の解明が進むことによって,将来的に新たな分子標的薬の開発が期待され,今後のALLの克服において非常に重要な意味を持つ.本稿では,ALLの分子病態の最新の知見について解説する.

キーワード
急性リンパ性白血病、分子病態、染色体異常、遺伝子異常

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●新規薬剤
ALLにおける抗体療法開発の現状

加藤 光次*
* 九州大学病院血液腫瘍内科

要  旨
 多剤併用化学療法により,成人ALLは高い寛解率は得られるが,依然生存率は50%前後である.再発ALLでは同種移植により長期生存が担保されるが,その恩恵に与れる患者は少ない.新規治療が模索される中,CD19,CD22などALL細胞表面の抗原を標的とする抗体療法の開発が近年大きく進んだ.抗体療法を治療早期に用いる方向でも検討されており,ALLの標準治療が今後大きく変わっていくことが予想される.

キーワード
急性リンパ性白血病、リツキシマブ、ブリナツモマブ、イノツズマブオゾガマイシン

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●新規薬剤
ALLに対するCAR療法
海野 健斗*1  大嶺 謙**1*2

*1 自治医科大学内科学講座血液学部門 **1 同講師
*2 同免疫遺伝子細胞治療学(タカラバイオ)講座 講師

要  旨
 T細胞を遺伝子改変し,腫瘍特異性と機能強化を付与して用いる養子免疫療法の開発が進んでいる.特に腫瘍抗原認識部位とT細胞活性化シグナル伝達ドメインから構成されるキメラ抗原受容体(CAR)を用いた治療が,B細胞性ALLで目覚ましい治療効果を示している.一方で,サイトカイン放出症候群や神経毒性などの有害事象に対するマネージメント法の確立やCAR療法後の再発の問題など,新たな課題が明らかになってきている.
キーワード
キメラ抗原受容体、養子免疫療法、CD19

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●臨床
AYA 世代の ALL ―小児科の立場から―

渡辺 新*
* 中通総合病院小児科 統括科長

要  旨
 思春期・若年成人に発症したALLには,至適化学療法で治癒が期待できる症例が含まれており,その群の抽出に最も有用な指標となるのは微小残存病変(MRD)の反応性である.L-アスパラギナーゼの適正使用を含む小児型プロトコールを厳格に施行し,MRDによる層別化を行っていくことが最も推奨される治療選択であり,MRD反応不良例だけを同種造血幹細胞移植の対象とすべきである.

キーワード
急性リンパ性白血病、思春期・若年成人、微小残存病変、L-アスパラギナーゼ、至適化学療法

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●臨床
AYA 世代の ALL ―内科の立場から―

近藤 英生*
* 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科総合内科学 講師

要  旨
 小児と成人の境界である思春期後期ALLの治療は,後ろ向き解析により小児プロトコールが成人プロトコールより優れているとの結果が相次いで報告され,その後行われた前向き試験においても全生存率60~80%と良好な成績が確認された.小児型プロトコールは成人ALL全体に広がっており,治療成績の向上に寄与している.今後,新規治療法との組み合わせにより,さらなる向上が期待される.

キーワード
急性リンパ性白血病、AYA世代、小児プロトコール

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●臨床
Ph陽性ALLへの化学療法
伊藤 能清*

* 九州大学病院別府病院免疫・代謝・血液内科 診療講師

要  旨
 Ph陽性ALLは,かつては予後不良なALLの一亜型であったが,チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の登場によって劇的に予後が改善している.TKI時代では,ABL1遺伝子変異の有無が予後に大きく影響しており,その克服を目指したさらなる新規TKIの開発が予後改善に大きく寄与している.本稿では,現時点でのTKI併用化学療法の臨床試験の結果を総括した.
キーワード
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病、化学療法、チロシンキナーゼ阻害薬

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●臨床
成人Ph陽性ALLに対する造血幹細胞移植療法
水田 秀一*

* 国立病院機構豊橋医療センター血液内科 部長

要  旨
 イマチニブ併用化学療法により,Ph陽性ALLの寛解率が飛躍的に向上し,寛解後の早期再発が少なくなった.その恩恵により,多くの症例を造血幹細胞移植にリクルートすることが可能になった.さらに,イマチニブ併用化学療法により造血幹細胞移植後の再発率の低下,生存率の向上がもたらされた.今後は,高齢者,HLA適合ドナーを有しない症例等に対して,自家移植が選択肢の1つとして組み込まれていく可能性がある.

キーワード
フィラデルフィア染色体、急性リンパ性白血病、同種造血幹細胞移植、自家移植、イマチニブ

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●臨床
Ph陰性ALLの化学療法
今井 陽俊*

* 札幌北楡病院血液内科 主任部長

要  旨
 成人Ph陰性ALLに対する化学療法は,小児ALLの治療成績の向上に伴って改善してきているが,確立されていない.基本的な治療戦略は,残存病変による治療抵抗性を獲得しないように,治療早期に最大限の抗腫瘍効果を発揮させることである.高齢者では,全身状態と社会的問題点を考慮して治療方針を検討する.化学療法を行う際には有効性と安全性の検討を行い,その治療法が本邦で保険適用であることを確認する.

キーワード
急性リンパ性白血病、フィラデルフィア染色体陰性、化学療法

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●臨床
Ph陰性ALLに対する造血幹細胞移植
田中 淳司*

* 東京女子医科大学血液内科学講座 教授

要  旨
 Ph陰性ALLに対しては,標準リスク,高リスクともに第1寛解期での同種移植の有効性が指摘されている.しかし,同種移植は症例ごとに原病,ドナー,comorbidityなどの背景が異なるため,個々の症例に適した治療・移植の方法を検討していく必要がある.また移植前処置の選択としては,若年者には強度を高める工夫(VP16/CY/TBI等)も必要であるが,高齢者には強度を弱めた骨髄非破壊的減量前処置も考慮すべきである.
キーワード
急性リンパ性白血病(ALL)、移植片対宿主病(GVHD)、移植片対白血病(GVL)効果、幹細胞移植(SCT)

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●臨床
ALL における微小残存病変(MRD)
堀 壽成*

* 愛知医科大学小児科 准教授
要  旨
 今日の腫瘍性疾患の治療において,微小残存病変(MRD)は広く認知され,特に小児ALLにおいては強力な予後因子として,世界各国の臨床試験における治療層別化の必須項目として定着した.さらにその概念は,近年さまざまな分野へ拡大するとともに,新たな技術開発によりさらなる発展を遂げつつある.本稿では各測定法の特徴やその臨床的意義に加えて,最新の知見について概説する.

キーワード
急性リンパ性白血病、微小残存病変、RQ-PCR、フローサイトメトリー、Ig/TCR遺伝子再構成

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●臨床
Ph-like ALL
今村 俊彦*

* 京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学 講師
要  旨
 Ph-like ALLはBCR-ABL陰性であるが,遺伝子発現プロファイルが BCR-ABL 陽性ALLと類似したBCP-ALLの総称である.NCI-HR症例に多く,予後不良であり,IKZF1遺伝子欠失の頻度が高く,多くの例でチロシンキナーゼやサイトカイン受容体の遺伝子再構成および遺伝子異常を有することが特徴である.こうした遺伝子異常を治療標的として分子標的薬の導入が進められており,予後の改善が期待される.

キーワード
Ph-like ALL、チロシンキナーゼ、サイトカイン受容体、チロシンキナーゼ阻害薬、IKZF1

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痛みのClinical Neuroscience
(17)痛みに対する漢方とニューロサイエンス
戴 毅    
兵庫医療大学薬学部薬物治療学(漢方医学)教授
野口 光一  兵庫医科大学学長/解剖学神経科学部門主任教授

要  旨
急性痛に対して,NSAIDsをはじめとする現代の西洋医学的治療薬は奏効することが多いが,こと慢性痛になると難渋するケースがしばしば見られる.一方,漢方治療は慢性痛に奏効する臨床報告が年々増加し,注目されるようになっている.本稿では,痛みの漢方治療について,ニューロサイエンス分野の最新研究成果を紹介するとともに,現代科学の観点から疼痛治療における複合漢方処方の合理性を考察し,鎮痛補助薬としての漢方使用を提案する.


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連載
肉眼解剖学者がみたヒト大脳の立体構造

 脳の肉眼解剖学に40年間携わってこられた金沢医科大学・篠原治道先生による誌面講義の第20回は「前・下方および内・外側からのアプローチ(2)腹側視床・大脳基底核 -腹側視床,レンズ核ワナ,レンズ核,線条体,レンズ核束,不確帯,視床下核,尾状核-」です。
 開業医、研修医、専門医の方々にもご興味やご関心をもって頂けるような内容となっています。

前・下方および内・外側からのアプローチ(2)腹側視床・大脳基底核 -腹側視床,レンズ核ワナ,レンズ核,線条体,レンズ核束,不確帯,視床下核,尾状核-(本文より)

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トピックス
iPS細胞を用いた認知症の解明と治療への応用
今村 恵子*   井上 治久**
* 京都大学 iPS 細胞研究所 ** 同教授
要  旨
 患者の体細胞から人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を作製し,さらにそのiPS細胞から分化誘導した疾患標的細胞を用いた疾患研究が進められている.本稿では,その中でもiPS細胞を用いた認知症研究の進歩について述べる.

キーワード
iPS細胞、認知症、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症

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トピックス
高リスクGISTに対する周術期補助療法
黒川 幸典*   森 正樹**  土岐 祐一郎**
* 大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学 ** 同教授

要  旨
 切除不能GISTに対してはイマチニブによる治療が標準治療であるが,近年では切除可能GISTに対しても周術期にイマチニブを用いる治療開発が行われている.術後補助療法に関しては,高リスク症例に対しては術後のイマチニブ投与によって無再発生存期間が延長することが証明された.一方,術前補助療法に関してはエビデンスはまだほとんど出ておらず,腫瘍径10cm以上の胃GISTを対象にした日韓共同第Ⅱ相試験の結果が待たれる.

キーワード
消化管間質腫瘍(GIST)、ネオアジュバント治療、イマチニブ

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投稿
真性多血症の診断と治療 ―プライマリ・ケア医のための基礎知識―
山口 博樹*
* 日本医科大学血液内科 准教授

要  旨
 真性多血症(PV)は骨髄増殖性腫瘍の1病型で,多くの場合,汎血球増加を来すが,特に赤血球数の増加が顕著である.本疾患は疾患進行の過程で高率に血栓症を合併するため,その症候,身体所見,検査所見を総合して早期に診断し,治療に結びつけることは重要である.本稿では,PVにおける疫学,病態,最近改訂されたWHO診断基準と診断のポイント,治療意義および血液専門医との連携について概説する.
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