最新醫學 72巻7号 
特集 重症喘息 -基礎から臨床まで-


要  旨


座談会
重症喘息診療up–to–date

鹿児島大学     井上 博雅
帝京大学      長瀬 啓之
東海大学      浅野 浩一郎  (司会)

 座談会の内容
 ・重症喘息の定義と疫学
 ・重症喘息と診断する前に必要なこと
 ・喫煙者喘息とACO 
 ・新しいぜんそく治療法 
など
 
   長瀬先生      浅野先生        井上先生

目次へ戻る



重症喘息の診断基準と病型分類

鎌谷高志* 福永興壱**
*  慶應義塾大学医学部呼吸器内科 ** 同専任講師

要  旨
 重症喘息についてはいまだ統一された定義はないが,本稿ではWHO,日本の喘息予防・管理ガイドライン2015そしてERS/ATSのガイドラインにおけるそれぞれの定義について概説する.また近年,喘息は病態,臨床所見,治療に対する反応性などに多様性があることが言われているが,それを説明する概念であるフェノタイプ(表現型)分類が盛んに検討されるようになった.執筆の時点ではそれぞれのフェノタイプに対して行われる適切な治療は確立されていないが,将来的にはエンドタイプも交えて喘息の多様性をより正確に分類し,喘息の予防,治療,その反応性などの臨床応用につなげていくことが望まれている.

キーワード
気管支喘息、重症喘息、フェノタイプ、エンドタイプ、クラスター分類

目次へ戻る



重症喘息のバイオマーカー

松本久子*
* 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学 講師

要  旨
 吸入ステロイドや他の長期管理薬で管理不十分な重症喘息には,個々の病態に応じた治療が望まれる.最も病態解析が進んでいる2型/好酸球性炎症のバイオマーカーには,喀痰・血中好酸球,呼気一酸化窒素,血清ペリオスチンなどがある.これらは個別でも活用できるが,組み合わせることで重症例をより的確に抽出できる.非2型重症喘息のマーカーは,探索段階ではあるが,肥満・易感染型などに関連した分子が注目される.

キーワード
好酸球、血清ペリオスチン、呼気一酸化窒素、TSLP、ILC2

目次へ戻る



喘息重症化因子 1.ウイルス

中込 一之*
* 埼玉医科大学呼吸器内科・アレルギーセンター 講師

要  旨
 喘息増悪の原因として最も頻度が高いのがウイルス感染である.喘息患者はウイルスに感染しやすいことが知られ,インターフェロンなどの抗ウイルスサイトカインの産生不全がその原因と考えられている.一方で,ウイルスの種類による喘息に対する関与の違いも報告されており,ライノウイルスではアレルゲン感作と相乗作用があることが明らかとなっている.また,ライノウイルスではA型とC型ライノウイルスが病態を悪化させやすいなど,種による違いも示唆されている.

キーワード
ライノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス、喘息増悪

目次へ戻る



喘息重症化因子 2.真菌
松瀬 厚人*

* 東邦大学医療センター大橋病院呼吸器内科 教授

要  旨
 多くの疫学研究により,真菌が喘息の難治化因子であることは明らかである.正確な数は不明であるが,アレルギー患者の真菌の感作率は高く,今後も増加していくと考えられる.真菌の中には,アスペルギルス属やアルテルナリア属のように,特に喘息と関連が強い真菌が存在する.真菌感作重症喘息の治療として,通常の喘息治療に加えて抗真菌薬や坑IgE抗体の有効性が示唆されているが,本邦における前向き研究が必要である.

キーワード
真菌、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、真菌感作重症喘息

目次へ戻る



喘息重症化因子 3.肥満

今野 哲*
* 北海道大学大学院医学研究院・医学院呼吸器内科学講座 准教授

要  旨
 肥満は,気管支喘息の病態に影響を及ぼす重要な要因の1つであるが,その影響は症状,呼吸機能,炎症等さまざまな機序が推定される.本邦は欧米と比較し肥満者の割合が低いが,一方で日本人は肥満に弱いという考えもあり,本邦での独自の検討が重要である.また,肥満が喘息炎症に与える影響は一方向性ではなく,肥満喘息患者全体に対する共通のアプローチはなく,個々による肥満が喘息病態に与える影響を慎重に考慮する必要がある.

キーワード
気管支喘息、肥満、炎症、多様性、個別化治療

目次へ戻る



喘息重症化因子 4.喫煙(Asthma-COPD Overlap)
柴田 陽光*

* 山形大学医学部附属病院第一内科 病院教授

要  旨
 喘息患者においても喫煙率は高い.喫煙は喘息発症のリスクを高め,喫煙継続で呼吸機能が悪化し,治療コントロール不良となる.喫煙喘息患者ではステロイド耐性が生じているが,機序としてヒストン脱アセチル化酵素抑制などが報告されている.禁煙はこのステロイド耐性を解除する.幼少期に発症した喘息患者が喫煙を続けると慢性閉塞性肺疾患(COPD)を併存してくるが,長期喫煙COPD患者で40歳以降に喘息が発症してくることもあり,予後不良である.

キーワード
気管支喘息、喫煙、ステロイド耐性、Asthma-COPD Overlap

目次へ戻る



重症喘息関連疾患 1.アスピリン喘息
三井 千尋* 谷口 正実**

*  国立病院機構相模原病院臨床研究センター ** 同センター長

要  旨
 アスピリン喘息の主病態はシステイニルロイコトリエン(CysLTs)過剰産生であるが,その機序は完全には解明されていない.アスピリン喘息患者の上下気道に集簇した好酸球やマスト細胞がCysLTsの主要産生細胞とされているが,血小板や好塩基球もCysLTs過剰産生に関与している可能性がある.

キーワード
アスピリン喘息、好酸球性副鼻腔炎、システイニルロイコトリエン、好酸球、血小板

目次へ戻る



重症喘息関連疾患 2.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
釣木澤 尚実* 押方 智也子*

* 国立病院機構埼玉病院呼吸器内科

要  旨
 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は,アレルギー疾患を背景に末梢血好酸球増多を伴う全身性壊死性血管炎である.喘息治療経過中に発症することが多いが,早期診断は難しいことも多い.また,治療開始後に新たな臓器障害が出現することがあること,一度寛解した後も再燃することがあるため管理が難しい疾患である.診断後は早期治療導入を行い,ステロイド,免疫抑制薬治療後も十分に改善しない多発単神経炎や心病変に対してはIVIGを考慮する必要がある.

キーワード
好酸球性多発血管炎肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群、アレルギー性肉芽腫性血管炎、
ANCA関連血管炎

目次へ戻る



重症喘息関連疾患 3.好酸球性副鼻腔炎(分子病態を含めて)
藤枝 重治** 高林 哲司*

* 福井大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 講師 ** 同教授

要  旨
 重症気管支喘息に合併する代表的な疾患として,好酸球性副鼻腔炎が挙げられる.これは2000年頃に提唱された新しい概念の難治性副鼻腔炎であり,治療に難渋している.2015年,多施設共同研究のJESREC Studyによって診断基準と重症度分類が決定され,臨床で広く使用されるようになった.好酸球性副鼻腔炎は,原則Th2関連疾患と考えられ,抗体治療が国際共同治験として始められつつある.一方で,凝固系と線溶系のアンバランスが鼻茸形成の原因とも報告されている.

キーワード
好酸球性副鼻腔炎、JESRECスコア、フィブリン網、凝固系、線溶系

目次へ戻る



重症喘息の新規治療 1.抗IgE抗体
田中 明彦* 相良 博典**
*  昭和大学医学部内科学講座呼吸器アレルギー内科部門 講師 ** 同教授

要  旨
 抗IgE抗体のオマリズマブは,血液中のIgEがマスト細胞,好塩基球,好酸球などの炎症細胞表面上へ結合することを阻害することによって薬理効果を発揮する.実臨床では,従来の喘息治療を十分に実施してもコントロールが不良のアトピー型喘息に対して使用される.その有効性は約6割程度と考えられる.投与開始後は16週間を目安に,自覚症状,増悪頻度,呼吸機能などを指標に複合的に効果判定し,継続治療を検討する.

キーワード
IgE抗体、オマリズマブ、マスト細胞、重症喘息、難治性喘息

目次へ戻る



重症喘息の新規治療 2.抗IL-5抗体
赤上 巴*1*2 永田 真**1**2

*1  埼玉医科大学呼吸器内科 **1 同教授 *2  埼玉医科大学病院アレルギーセンター **2 同センター長

要  旨
 IL–5は,喘息で見られる好酸球性気道炎症の重要な調節分子である.その産生細胞は主としてTh2細胞であるが,2型自然リンパ球の関与も注目されている.抗IL–5抗体は,通常の治療で好酸球性気道炎症が制御し得ない重症喘息に対して,急性増悪の減少,1秒量の改善,ステロイド投与量の抑制,QOLの改善効果などを示す.抗IL–5抗体療法は,好酸球性炎症型の重症喘息における,特異性が高くかつ効果的な治療として,その普及が期待される.


キーワード
IL-5、好酸球、重症喘息、急性増悪

目次へ戻る



重症喘息の新規治療 3.抗IL-4/IL-13薬
三山 英夫* 井上 博雅**

*  鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学 ** 同教授

要  旨
 IL-4とIL-13は,喘息の病態に中心的な役割を担っているタイプ2サイトカインである.両者の受容体やシグナル伝達経路は共通性が見られ,生物活性も類似している.IL-4/IL-13は活性化されたCD4陽性ヘルパーT細胞のTh2サブセット(Th2細胞)から産生され,2型自然リンパ球(ILC2)もIL-13を産生する.IL?4はTh2細胞の分化を促進し,B細胞に作用してIgEへのクラススイッチを誘導する.IL?13は気道上皮における杯細胞過形成,気道粘液の産生,気道過敏性亢進に関与する.IL-13/IL-4をターゲットにした抗IL-13抗体や抗IL-4受容体抗体などの喘息治療薬が開発され,臨床試験でも呼吸機能の改善などその有効性が示されつつある.ただし,これらの薬剤はすべての喘息患者に有効性を示すわけではなく,バイオマーカーによってその効果が予測できる可能性も示されている.従来の治療に抵抗性を示す重症喘息症例に対する個別化・層別化治療に道を開く第一歩であるとともに,フェノタイプやエンドタイプの理解につながる可能性がある.

キーワード
IL-4、IL-13、気管支喘息、ペリオスチン

目次へ戻る



重症喘息の新規治療 4.気管支サーモプラスティ
石井 芳樹*

* 獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科 教授

要  旨
 気管支サーモプラスティは,重症気管支喘息に対する治療の1つの選択肢として登場し,普及が進んでいる.温熱負荷によって気管支平滑筋を減少させてしまうという画期的な治療法であるが,その有用性や安全性が十分に確立した治療法ではないため,熟練した気管支鏡専門医と喘息治療の豊富な経験を持つアレルギー専門医の協力のもと,慎重に施行する必要がある.本稿では,本法の原理からこれまでの臨床成績,施行の実際と注意点,問題点を整理してみた.

キーワード
気管支喘息、気管支サーモプラスティ、温熱療法、気管支平滑筋

目次へ戻る


痛みのClinical Neuroscience
(25)Sensori-motor Integrationと痛みの慢性化
住谷 昌彦
  東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部/麻酔科・痛みセンター 准教授
大住 倫弘  畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
大竹 祐子
  文京学院大学スポーツマネジメント研究所

要  旨
 ヒトは,四肢運動に伴う運動系と感覚系の情報伝達を常に中枢神経系でモニターし,これを知覚?運動ループと呼ぶ.健常状態では知覚?運動ループが整合されているが,知覚?運動ループの整合性が破綻すると,その異常に対する警告として痛みが中枢神経系で起こる(認知される)と考えられている.幻肢痛に対する鏡療法を例に,知覚?運動ループの破綻とその統合による神経リハビリテーションの鎮痛機序を考察する.

目次へ戻る



連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

第46回は国立長寿医療研究センター副院長・荒井 秀典 先生による「コレステロール代謝と関連疾患 -Brown博士,Goldstein博士のノーベル生理学・医学賞受賞まで~受賞後-」です。

目次へ戻る



トピックス
多発性内分泌腫瘍症のガイドラインの活用
櫻井 晃洋*

* 札幌医科大学医学部遺伝医学 教授

要  旨
 多発性内分泌腫瘍症(MEN)は,複数の内分泌臓器に腫瘍や過形成を生じる常染色体優性遺伝性疾患であり,その診療においては幾つかの課題が存在する.より円滑で見落としなく,かつ患者・家族の便益となる診療を実現するために,診療ガイドラインが作成されている.本稿ではその概要を紹介する.

キーワード
遺伝性腫瘍、サーベイランス、遺伝カウンセリング、発症前診断

目次へ戻る


トピックス
IgG4関連膵・胆管炎の疾患スペクトラム
全   陽*

* 神戸大学病院病理診断科 特命教授

要  旨
 IgG4関連疾患は,過去10年間で精力的に研究され,臨床的な全体像はほぼ明らかとなった.さまざまな罹患臓器の中で膵臓が最も高頻度に侵され,胆管炎は膵炎と密接に関連して発生する.胆膵領域のIgG4関連疾患は2型自己免疫性膵炎,原発性硬化性胆管炎,膵胆道がんと鑑別を要し,臨床像,画像所見,病理検査によりこれらの病態と区別することができる.IgG4関連疾患のoverdiagnosisを避けるためには,本疾患を正しく理解することが重要である.

キーワード
IgG4、硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎、炎症性偽腫瘍、IgG4関連疾患

目次へ戻る


症例報告
胆嚢摘出術後7年を経過し,下血で発症した横行結腸硬化性腸間膜炎の1切除例

壷井邦彦*1  渋谷信介*2  足立幸人*3

*1 社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会野江病院消化器外科
*2 同病理診断科 *3 同消化器外科/副院長

目次へ戻る