最新醫學 72巻9号 
特集 ここまで変わったC型肝炎の治療


要  旨


座談会 Direct Acting Antiviral(DAA)によるC型肝炎治療の課題と展望

山梨大学        榎本 信幸
大阪大学        竹原 徹郎
埼玉医科大学      持田 智  (司会)

 座談会の内容
 ・IFNからDAAへ -抗ウイルス療法の歴史的変遷-
 ・最新の抗ウイルス療法
 ・腎機能低下例に対する治療
 ・DAA治療後のQOL 
など
 
   竹原先生      持田先生        榎本先生

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HCVのライフサイクルとDAAの作用機序

相崎英樹* 脇田隆字**
*  国立感染症研究所 室長 ** 同副所長

要  旨
 レプリコン,感染性クローン等によりHCV研究は急速に発展し,治療もDAAにより非常に高い著効率が見られている.一方,ウイルス学的著効(SVR)後も発がんが報告されており,電顕にて長期にわたってオルガネラ異常が観察されることから,筆者らは電顕病理学的に「SVR後症候群(post?SVR syndrome)」と言える病態を見いだしている.HCVの生活環の研究は新たな薬剤の開発だけでなく,SVR後の病態解明にもつながるものと期待できる.

キーワード
C型肝炎ウイルス、生活環、直接型抗ウイルス薬(DAAs)、ウイルス学的著効(SVR)、SVR後症候群

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我が国におけるC型肝炎治療ガイドライン

田中 篤*
* 帝京大学医学部内科学講座 教授

要  旨
 日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会では,2012年以来C型肝炎治療ガイドラインを作成している.2017年6月現在,第5.4版が最新版であり,ゲノタイプ1型・2型それぞれに対して治療推奨を行い,治療不成功例,腎機能障害・透析例,B型肝炎共感染例などについての治療方針も記載している.今後も新規薬剤の発売に合わせてアップデートする予定であり,日本肝臓学会のホームページで最新版を確認いただければ幸いである.

キーワード
ゲノタイプ1型、ゲノタイプ2型、腎機能障害、透析患者

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DAA治療の現況と展望 1.ゲノタイプ1型のC型肝炎

平松 直樹*
* 大阪労災病院 副院長/消化器内科 部長

要  旨
 ゲノタイプ1型のC型肝炎に対するIFNフリーDAA治療による著効率は,いずれも95%を超える時代となった.これにより,IFNフリーDAA治療は抗ウイルス療法の第1選択となり,非代償性肝硬変を除くC型肝炎のすべてが治療症例となった.さらに新規治療薬の開発が進んでおり,今後,非代償性肝硬変症例やDAA治療失敗例に対してもウイルス排除が期待できる.

キーワード
新規治療薬、非代償性肝硬変、DAA既治療、ソホスブビル/ベルパタスビル、グレカプレビル/ピブレンタスビル

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DAA治療の現況と展望 2.ゲノタイプ2型のC型肝炎
黒崎 雅之*

* 武蔵野赤十字病院消化器科 部長

要  旨
 ゲノタイプ2型に対するDAAによるIFNフリー治療として,ソホスブビル+リバビリン併用療法とオムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル配合剤+リバビリン併用療法が登場し,治療対象が拡大し,ウイルス排除率も格段に向上した.しかしながら,これらのレジメンはリバビリンを含んでいるため,リバビリンが使用できない症例や,腎障害のある症例では選択肢とならないため,次世代治療薬の登場が待たれる.

キーワード
ソホスブビル、リバビリン

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DAA治療の現況と展望 3.パンゲノタイプDAA治療

鈴木 文孝*
* 虎の門病院肝臓センター 部長

要  旨
 C型肝炎ウイルス(HCV)に対する治療薬は,近年飛躍的に進歩してきている.最近発表されたHCVゲノタイプ1型から6型まで広範な効果を認めるパンゲノタイプのDAAs治療の成績を述べる.グレカプレビルとピブレンタスビル治療およびソホスブビル,ベルパタスビル,ボキシラプレビル治療,いずれにおいても高い有効性を認めた.今後,C型肝炎治療の新しい治療法として期待される.

キーワード
C型肝炎、パンゲノタイプ、直接型抗ウイルス薬

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Unmet Needsへの挑戦 1.腎不全患者の治療
須田 剛生* 木村 恵* 川岸 直樹* 坂本 直哉**

*  北海道大学大学院医学研究科消化器内科学分野 ** 同教授

要  旨
 ウイルスタンパク質を直接的にターゲットとしたDAAsの急速な開発により,今までUnmet Needsであった透析症例を含む高度腎機能障害患者に対しても,安全に高い治療効果を持って治療が可能であることが報告されつつある.インターフェロン治療が中心であった時代と大きな変化を迎えた腎機能障害合併慢性C型肝炎患者に対する治療の進歩を概説する.

キーワード
C型肝炎ウイルス(HCV)、直接型抗ウイルス薬(DAAs)、血液透析患者、腎障害

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Unmet Needsへの挑戦 2.非代償性肝硬変に対するDAA治療
巽 智秀*

* 大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学 講師

要  旨
 C型肝炎の非代償性肝硬変に対する抗ウイルス治療は確立されていない.最近,DAAによる治療の臨床試験が欧米より一部報告され,本邦でも非代償性肝硬変に対するDAA治療の臨床試験がようやく始まろうとしている.欧米ではC型慢性肝炎よりやや低い著効率との報告ではあるが,早急に本邦でのDAA治療を確立する必要がある.

キーワード
非代償性肝硬変、C型肝炎、直接型抗ウイルス薬(DAAs)、著効率、肝移植

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治療効果を規定する要因 1.薬剤耐性ウイルスの成立機序とその対策
内田 義人* 持田 智**

*  埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科 ** 同教授

要  旨
 DAAs療法の治療効果を規定するresistance?associated substitutions(RASs)として,NS3領域D168V変異,NS5A領域L31M/V変異とY93H変異,NS5B領域S282T変異が挙げられる.特に,NS5A?Y93H変異は約20%の頻度で存在しており,治療開始前に同変異の有無を評価することが重要である.また,RASを有する症例で抗ウイルス療法を開始すると治療不成功となるばかりか,ウイルスの排除が得られなかった場合に新たに高度耐性変異が出現するため,再治療の際にはRASのプロファイルを十分に把握する必要がある.

キーワード
C型肝炎ウイルス(HCV)、直接型抗ウイルス薬(DAAs)、Resistance-associated substitutions(RASs)

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治療効果を規定する要因 2.DAA治療における宿主要因の意義
松浦健太郎*1*2 田中 靖人**2

*1 名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学
*2 同病態医科学講座肝疾患センター **2 同教授

要  旨
 C型慢性肝疾患に対するIFNを基本とした治療の効果には,さまざまなウイルス因子,IL28B遺伝子多型をはじめとした宿主因子が関連することが報告されてきた.現在,主流であるDAAs併用療法により,これまで難治例とされていた高齢,肝線維化進展,IL28B遺伝子型が治療抵抗型の患者においても極めて高いHCV排除率が得られるようになった.

キーワード
直接型抗ウイルス薬(DAAs)、Sustained virological response(SVR)、ゲノムワイド関連解析(GWAS)、
1塩基多型(SNP)、IL28B

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DAA治療のアウトカム 1.肝発がんの実態と対策
八橋 弘*
* 国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター長/肝臓内科

要  旨
 C型肝炎の抗ウイルス治療法は,現在内服薬(DAAs)のみの治療が主流となり,従来ウイルス駆除が困難であった高齢者や肝硬変症例においても高い確率でHCV駆除が可能となり,C型肝炎患者全体の発がん率は今後さらに低下することが期待されている.一方,肝がん治療既往例に対するDAAs治療後の肝がんの再発の状態に関しては,肝がんの再発が抑制されるのか,それとも促進される可能性があるのかが論点となっている.

キーワード
直接型抗ウイルス薬(DAAs)治療、C型肝炎、肝がん、Sustained virological response(SVR)

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DAA治療のアウトカム 2.肝予備能,肝外臓器およびQOLへの影響
中川 美奈*1*2 朝比奈靖浩*1*3

*1  東京医科歯科大学消化器内科 *2  同統合教育機構 准教授 *3  同肝臓病態制御学 教授

要  旨
 HCV感染症はDAA治療により,従来のIFN治療に非適応,不耐,無効症例でも治癒可能な時代となった.HCV駆除による効果は,肝発がん抑止,線維化および予備能改善だけでなく,種々の肝外病変やQOL改善にも及ぶ.このような背景から,近年では他臓器合併症にも配慮したHCV感染症治療のガイドライン作成の必要性が論じられるようになっている.他職種連携を密に行い,他臓器合併症にも十分配慮したHCV感染症治療が望まれている.

キーワード
肝予備能、肝外病変、QOL、多職種連携

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DAA治療のアウトカム 3.医療経済と今後の患者動向
建石 良介*

* 東京大学大学院医学系研究科がんプロフェッショナル養成プラン・消化器内科学 特任講師

要  旨
 C型肝炎に対するDAAの登場は,その効果の高さに加えて薬価が高額であることから,医療のコストと便益について大きな議論を巻き起こした.医療における費用効果分析においては,新しい治療導入に伴う追加コストを効果の増加で割った増分費用効果比を計算し,費用の増加が効果の増加に見合うかを検討する.質調整生存年(QALY)をアウトカムとした解析の結果,ダクラタスビル(DCV)+アスナプレビル(ASV)以降のDAAは,増分費用効果の点からは,薬価が高すぎることが明らかになった.

キーワード
増分費用効果、機会費用、質調整生存率(QALY)

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肝がん撲滅に向けた患者の掘り起こしと受診勧奨
江口有一郎**1 岩根紳治*1 藤岳夕歌*1*2 福吉 潤*2 吉原大介*3

*1  佐賀大学医学部附属病院肝疾患センター **1 同センター長 *2  ㈱キャンサースキャン
*3  佐賀県健康福祉本部健康増進課

要  旨
 C型肝炎の抗ウイルス治療は,今では100%近いウイルス駆除率が得られ,抗ウイルス治療後の肝がんサーベイランスや治療も進歩してきた.一方で,まだ国内には肝炎ウイルス検査の受検さえも至っていない者,また抗ウイルス治療の受療を思いとどまっている者も多い.肝がん撲滅に向けた患者の掘り起こしと受診勧奨のためには,対象者の深層心理や背景を理解し,実効的な啓発および情報発信を行っていかなければならない.

キーワード
肝炎ウイルス検査、受検率、受診率、受療率、フォローアップ

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痛みのClinical Neuroscience
(27)リウマチ・膠原病と痛み
今井 裕一
  多治見市民病院内科/病院長
河合 浩寿  多治見市民病院内科
平井 和哉  多治見市民病院内科
坂野 章吾  愛知医科大学腎臓・リウマチ膠原病内科

要  旨
 ①関節リウマチの関節痛は炎症指標と連動することが多いが,約20%は炎症が関与せず,アセトアミノフェンやトラマドールが有効である. ②強直性脊椎炎の痛みは,定期的な運動・体操と非ステロイド性抗炎症薬,サラゾスルファピリジンで安定化することが多い. ③リウマチ性多発筋痛症の肩周囲痛は,少量ステロイドが著効する. ④線維筋痛症の痛みには,抗痙攣薬プレガバリン,抗うつ薬デュロキセチンが有用である.

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連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

第48回は京都ルネス病院特別顧問・永原 國彦 先生による「甲状腺の生理・病理・外科 ―エミール・テオドール・コッヘル(Emil Theodor Kocher)―」です。

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トピックス
膵島イメージングの最新の進歩
藤本 裕之*1 稲垣 暢也*2

*1 京都大学環境安全保健機構放射性同位元素総合センター
*2 京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学 教授

要  旨
 糖尿病の分野において,膵島特に膵b細胞の量を知ることは,糖尿病の病態を知るうえで重要である.膵β細胞量を知るために膵島イメージングの研究が進められ,蛍光,発光,核医学的手法などさまざまな方法が用いられている.本稿では,臨床応用を目的とした膵島イメージング研究の現状について,我々の研究を含めて紹介する.

キーワード
膵島イメージング、PET、SPECT、膵β細胞

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トピックス
自己反応性T細胞の選別にかかわる転写因子Fezf2の発見
高場 啓之* 高柳 広**

*  東京大学大学院医学系研究科病因・病理学専攻免疫学講座 助教 ** 同教授

要  旨
 T細胞は多様性に富むT細胞抗原受容体を持つが,この多様性は胸腺ででき上がる.自己成分(自己抗原)に応答する自己反応性T細胞ができた場合,末梢での自己免疫反応を未然に防ぐため,胸腺で除去されている.この過程は「負の選択」と呼ばれ,転写因子Fezf2や転写制御因子Aireにより制御されている.Fezf2とAireはそれぞれ独立した制御機構を持ち,負の選択と自己免疫寛容の成立に必須な遺伝子である.

キーワード
自己反応性T細胞、胸腺上皮細胞、免疫寛容、負の選択、制御性T細胞

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