最新醫學 72巻11号 
特集 骨髄増殖性腫瘍(MPN)の分子病態と診断・治療のup-to-date状腺臨床の最前線


要  旨


座談会 これからの骨髄増殖性腫瘍の基礎研究と臨床のゴール

自治医科大f学        桐戸 敬太
順天堂大学
          荒木 真理人
順天堂大学          小松 則夫  (司会)

 座談会の内容
 ・はじめに
  -骨髄増殖性腫瘍がなぜここまで注目されるよう
    になったのか-
 ・JAK阻害薬開発の現状
 ・今後注目される治療薬および治療戦略 
など
 
  荒木先生      小松先生        桐戸先生

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基礎
MPN幹細胞

竹中 克斗*
* 九州大学病院血液・腫瘍・心血管内科 講師

要  旨
 MPNは,造血幹細胞の異常により,分化した骨髄系,赤芽球系,巨核球系の1系統または複数の系統の血球がクローナルな増殖を来す疾患群である.JAK2V617F変異,CALR変異などのドライバー遺伝子変異が造血幹細胞レベルで生じ,これらの変異の生じた腫瘍性幹細胞が徐々にクローンを拡大し,骨髄球系細胞の増殖を生じ,MPN病態を呈すると考えられる.

キーワード
骨髄増殖性腫瘍、ドライバー変異、幹細胞、遺伝子変異マウスモデル、異種移植モデル

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基礎
疾患由来iPS細胞を用いたMPNの病態解析

宮内 将* 黒川 峰夫**
*  東京大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学 ** 同教授

要  旨
 iPS細胞は疾患モデルとしても応用され,MPN由来iPS細胞の樹立が報告されている.MPN由来iPS細胞は原疾患の特徴を反映した有効な疾患モデルの1つであり,その応用によって新たな知見も報告されてきている.

キーワード
疾患由来人工多能性幹細胞、骨髄増殖性腫瘍、疾患モデル


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基礎
MPNにおけるドライバー遺伝子変異による腫瘍化の分子メカニズム

荒木 真理人*
* 順天堂大学大学院医学研究科輸血・幹細胞制御学 准教授

要  旨
 MPNでは,ドライバー遺伝子変異によりサイトカイン受容体下流のシグナル伝達系が恒常的に活性化し,これにより腫瘍化した細胞が骨髄中で増殖することで,血球数の異常な増加や骨髄の線維化を引き起こすと考えられている.これまでに,変異遺伝子の同定やその機能の解明によって疾患の分子病態が明らかにされ,分子標的薬による治療が実現した.さらなる病態解明により,薬物療法による根治の実現が期待されている.

キーワード
JAK2、MPL、CALR、トロンボポエチン受容体、エリスロポエチン受容体

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基礎
Ph陰性MPNにおけるエピゲノム異常
篠田 大輔*   岩間 厚志**

*  千葉大学大学院医学研究院細胞分子医学 ** 同教授

要  旨
 MPNは,骨髄における1系統以上の骨髄系細胞の増殖を特徴とする造血幹細胞のクローン性腫瘍である.近年,次世代シークエンサーの網羅的解析が進み,造血器腫瘍の発生・進展にジェネティック・エピジェネティック両者の変異が重要な役割を担うことが明らかになってきた.本稿では,Ph陰性MPNにおいて特定されているエピゲノム変異の代表例について解説する.

キーワード
エピゲノム、DNAメチル化、ヒストン修飾、骨髄増殖性腫瘍

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基礎
MPNにおける骨髄病理診断の役割

伊藤 雅文*
* 名古屋第一赤十字病院病理部 部長

要  旨
 MPNは従来の古典的な分類が踏襲されるが,JAK2をはじめとする特定の遺伝子異常が高発現する疾患として,WHO 2008年分類では遺伝子検索の重要性が強調された.今回の改定では骨髄病理組織診断の重要性が強調され,骨髄病理診断が原発性骨髄線維症のみならず,真性多血症,本態性血小板血症の診断基準の大項目に取り入れられた.そのため,MPN診断において骨髄病理は必須検査項目となった.本稿では,MPN診断における骨髄病理の意義について解説した.

キーワード
骨髄生検、骨髄線維化評価、原発性骨髄線維症前繊維化期、本態性血小板血症

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基礎
家族性MPN
枝廣 陽子*

* 順天堂大学医学部内科学血液学講座

要  旨
 Ph陰性MPNの多くは,JAK2,MPL,CALRの体細胞変異によって孤発性に起こるが,1塩基多型や生殖細胞変異体によってJAK2,MPL,CALRなどの遺伝子変異を獲得しやすくなる家族性MPNの存在も報告されている.近年,家族性MPNの素因としてATG2BやGSKIPの生殖細胞の重複が報告されたが,発症機序はいまだ不明な点が多く,さらなる研究が必要である.

キーワード
家族性骨髄増殖性腫瘍、JAK2、生殖細胞変異、遺伝性赤血球増加症、遺伝性血小板増加症

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臨床
MPN診断の実際 ―WHO2016基準を中心に―
池田 和彦*

* 福島県立医科大学医学部輸血・移植免疫学講座 主任教授

要  旨
 MPNの2016年版WHO分類においては,真性多血症の診断基準の主項目に骨髄生検の所見が取り入れられ,原発性骨髄線維症が前線維化期と線維化期に分割されるなど,病理組織所見が一層重要視されている.また,2008年版の公開以降に明らかになったCALR変異が,本態性血小板血症と原発性骨髄線維症の診断基準に追加された.本稿においては,こうした変更のコンセプトや臨床所見との関連も含めて概説する.

キーワード
WHO分類、新生多血症、本態性血小板血症、前繊維化期骨髄線維症、線維化期骨髄線維症

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臨床
MPNにおける遺伝子変異の検査手法と実際
森下 総司*

* 順天堂大学大学院医学研究科輸血・幹細胞制御学

要  旨
 MPNのおよそ8割程度にJAK2,MPL,CALR遺伝子の変異が見られ,MPNの診断に遺伝子検査は必須になりつつある.一方で,骨髄線維症への移行やインターフェロン療法に伴う病態モニタリングのため,変異を検出するだけでなく定量する必要も出てきている.本稿では,最近の遺伝子変異検出・定量技術の動向に触れ,遺伝子検査の将来を俯瞰したい.

キーワード
変異解析技術、遺伝子変異、次世代シークエンサー、人工知能

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臨床
Ph陰性MPNの予後・予後予測因子
後藤 明彦*

* 順天堂大学医学部内科学血液学講座 先任准教授

要  旨
 Ph陰性MPNの生存期間は比較的長期であるが,症例によって幅があり,個々の症例に対して適切な治療を選択するためには適切な予後予測モデルの選択が必要である.Ph陰性MPNの病態が明らかになるにつれて種々の予後因子が解析され,それらに基づく予後予測モデルが考案されてきた.近年はJAK2,CALR,MPLといったドライバー変異のみならず,さまざまな遺伝子変異の予後への関与も明らかにされてきている.

キーワード
真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、二次性骨髄線維症、予後因子

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臨床
MPNに対する治療ゴールと新たな戦略
南 陽介** 山内 寛彦*
*  国立がん研究センター東病院血液腫瘍科 ** 同科長

要  旨
 MPNのうち,真性多血症(PV),本態性血小板血症(ET),骨髄線維症(MF)においてJAK2V617F変異が近年同定され,病態についての分子生物学的な機序の理解が深まるとともに,WHO分類において診断基準に取り入れられるなど,日常臨床においてもその重要性が増している.JAK阻害薬はMFに対して欧米で承認され,MPNに対する新たな分子標的療法として期待されているが,その耐性機序についても報告されつつある.PV,ETに対しても新規治療薬剤による新たな治療戦略が検討されつつある.

キーワード
骨髄増殖性腫瘍、真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、JAK2V617F変異、JAK阻害薬

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臨床
JAK阻害薬を中心に
桐戸 敬太*

* 山梨大学医学部血液・腫瘍内科 教授

要  旨
 MPNに対する治療薬として,ルキソリチニブが登場して5年が経過した.脾臓や全身症候の改善効果のエビデンスは確立したが,ルキソリチニブが長期的な予後を改善するかどうかは明確ではない.一方,ルキソリチニブ以外のJAK阻害薬の多くは,有効性や安全性の問題より開発が中断されている.このため,MPNの新たな治療戦略として,ルキソリチニブをベースとした併用療法の開発が注目されている.

キーワード
ルキソリチニブ、モメロチニブ、パクリチニブ、フェドラチニブ、併用療法

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臨床
インターフェロンの復活
小松 則夫*

* 順天堂大学医学部内科学血液学講座 主任教授

要  旨
 JAK阻害薬であるルキソリチニブは,慢性骨髄性白血病におけるチロシンキナーゼ阻害薬と異なり,変異遺伝子を消滅させることはない.一方,インターフェロン(IFN)は変異遺伝子量を高頻度に減少させ,中止後も血液学的寛解を長期間維持できる症例がある.最近では半減期が長く副作用の少ないペグ化IFNが開発され,発見後,約60年が経過したIFNは,MPNの領域でまさに「ルネサンス」,復活の時を迎えようとしている.

キーワード
インターフェロン、ペグ化インターフェロン、骨髄増殖性腫瘍、ドライバー変異、分子生物学的寛解

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臨床
Ph陰性MPNに対する造血幹細胞移植 ―移植適応とそのタイミング―
岡本 真一郎*

* 慶應義塾大学医学部血液内科 教授

要  旨
 骨髄線維症では,Dynamic IPSS(DIPSS)リスクカテゴリーのIntermediate?2およびHighが移植適応となる.また,低リスク症例であっても,予後不良の遺伝子変異や頻回の輸血を必要とする症例においても移植適応を検討すべきである.続発性骨髄線維症の移植適応に関しては,DIPSSよりMyelofibrosis Secondary to PV and ET?Prognostic Model(MYSEC?PM)の有用性が示唆されている.骨髄線維症/白血病に移行していないコントロール不良の真性多血症,本態性血小板血症に対しても,造血幹細胞移植は施行されることがあるが,その適応と至適なタイミングは明らかにされていない.

キーワード
JAK2阻害薬、ハプロ移植、予後予測、、骨髄増殖性腫瘍、、造血幹細胞移植

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痛みのClinical Neuroscience
(29)運動器の痛み 1.変形性関節症と痛みの科学
池内 昌彦
  高知大学医学部整形外科 教授

要  旨
 変形性関節症は関節軟骨が変性摩耗する疾患であり,その病態解明が進んでいるが,痛みの発生機序に関しては不明な点が多い.変形性関節症を関節軟骨の“wear and tear arthritis”から骨や滑膜,筋肉などを含む関節全体の問題“Joint failure”ととらえると,痛みの病態も理解しやすい.さらに,痛みを長期化・難治化させる神経感作や心理・社会的因子を把握することが重要である.

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トピックス
腎臓の自律神経と血圧
森澤 紀彦*1 藤澤 良秀*2 西山 成**1

*1  香川大学医学部形態機能医学講座薬理学 **1 同教授
*2  香川大学総合生命科学研究センター

要  旨
 交感神経活性の亢進は,高血圧発症要因の1つである.交感神経活性の亢進に対して腎臓は大きな役割を果たしており,中でも腎交感神経の関与は大きい.近年,治療抵抗性高血圧に対しての腎交感神経アブレーションの有用性が報告されており,注目を集めている.そこで本稿では,自律神経と血圧,ならびに腎臓と自律神経に関して概説し,腎交感神経切除による血圧コントロールに関して,最近の基礎的・臨床的知見を踏まえて解説する.

キーワード
交感神経、血圧、アブレーション、腎臓

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トピックス
肝臓免疫応答・免疫寛容誘導機序 ―腸肝相関の関与―
中本 伸宏**  柏松* 谷木 信仁* 金井 隆典***

*  慶應義塾大学医学部内科学(消化器) ** 同専任講師 *** 同教授

要  旨
 肝臓内に存在する免疫細胞がさまざまな肝疾患の病態に関与することが報告されているが,その詳細な免疫学的機序はいまだ不明な点が多い.本研究において,マウスのコンカナバリンA(ConA)惹起T細胞応答性急性肝障害モデルを用いて,投与早期の免疫応答期にTNF産生性CD11b+マクロファージがTh1活性化を介して肝障害の病態形成に重要な役割を果たす一方,投与7日目の免疫寛容期にCD11c+通常型樹状細胞がTLR9依存的にIL?10を産生し,肝障害の軽減に寄与することが明らかになった.

キーワード
急性肝障害、免疫寛容、腸内細菌、腸肝相関

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