最新醫學 72巻12号 
特集 腎代替療法 -機械工学と再生医療-


要  旨


座談会 甲状腺学の基礎と臨床 ―現状と今後の展開―

東京医科大学            菅野 義彦
島根大学
              伊藤 孝史
東京慈恵会医科大学        横尾 隆  (司会)

 座談会の内容
 ・透析療法の進歩
 ・植え込み型透析装置
 ・腎再生医療の実現化の可能性
 ・腎臓リハビリテーション
 ・医工連携のきっかけ作り
 
など
 
   伊藤先生        横尾先生       菅野先生

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人工臓器治療における急性腎障害(AKI)

吉田 輝彦*1 土井 研人*2
*1 東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科 *2 同救急部・集中治療部 講師

要  旨
 腎代替療法は人工臓器での臓器代替療法の先駆けと言えるが,昨今の他臓器における人工臓器治療の発達に伴い,合併する急性腎障害(AKI)が問題になってきている.そのうちでも高頻度に経験するAKIが,左室補助人工心臓(LVAD)に伴うAKIである.本稿では,特にLVADに関連するAKIに関して概説する.

キーワード
急性腎障害、左室補助人工心臓

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血液透析と先端医療 1.透析膜の進歩

山下 明泰*
* 法政大学生命科学部環境応用化学科 教授

要  旨
 透析膜は材質により,セルロース系膜および石油由来の合成高分子膜の2つに大別できる.またその物理構造により,全体が均一な均質膜と,緻密層と支持層からなる非対称性膜に大別できる.前者は主として生体適合性に関係し,後者は溶質および水の透過性を支配する.多くの合成高分子膜に親水化剤として含まれているポリビニルピロリドンは,生体適合性と密接な関連がある.特性を十分に考慮した膜の選択が望ましい.

キーワード
透水性、脂質通過性、生体適合性、均質膜、非対称性膜


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血液透析と先端医療 2.アフェレシス

峰島 三千男*
* 東京女子医科大学臨床工学科 教授

要  旨
 膜分離や吸着を利用し,患者血液中の病因タンパク質や血球成分を除去する治療を総称してアフェレシスと言う.新規デバイス開発は近年行われていないが,現用機器・デバイスを上手に使いこなすことによって,新しい治療の開発,適応拡大が図られている.製造メーカーからの新規デバイス開発につながるような,医療側からのニーズが必要である.

キーワード
アフェレシス、限外濾過、精密濾過、膜分離、吸着

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血液透析と先端医療 3.在宅血液透析
森 典子*

* 静岡県立総合病院腎臓内科 副院長

要  旨
 在宅血液透析(HHD)は腎代替療法の中で,移植を除いて最も透析効率が良く,患者の病態を改善するのみならず,QOLを上げ,満足度の高い透析となっている.HHDは透析の効率を表すhemodialysis product 70以上を容易に達成することができ,質の高い療法と言える.しかし,普及の障害となる因子が多く,HHD患者は慢性透析人口の0.2%にも及んでいない.HHDを拡大するには,施設透析の患者や医療従事者への啓発のみならず,HHDの指導・管理施設へのインセンティブの見直し,HHDに適した医療機器や製剤の開発,HHD患者や介助者のケアなど,さまざまな課題が残っている.

キーワード
在宅血液透析、hemodialysis product、短時間頻回透析、長時間透析

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腹膜透析と先端医療 1.新規腹膜透析液・検査法の開発

丹野 有道*
* 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 腎臓・高血圧内科

要  旨
 腹膜透析を安全に継続するためには,腹膜透析液の生体適合性を向上させる必要がある.今世紀初頭から始まった腹膜透析液の改良により腹膜劣化は低減傾向にあるが,いまだ改善の余地が残されている.本邦では,2015年から生体適合性がさらに改善された2種類の新規腹膜透析液が使用され始めており,長期間の腹膜透析継続を可能とする腹膜保全効果が期待される.腹膜劣化が軽微となることで,従来の指標ではその変化を適切にとらえきれなくなってきたため,これに対応する新規検査法として,腹膜透析専用極細ディスポーザブル・ファイバースコープの開発が行われている.

キーワード
腹膜透析、生体適合性、被嚢性腹膜硬化症、新規腹膜透析液、極細内視鏡

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腹膜透析と先端医療 2.腹膜傷害における中皮細胞シートによる腹膜再生
﨑山 亮一*1*2 本田 一穂*3 大和 雅之**2 岡野 光夫***2 峰島 三千男**1

*1   東京女子医科大学臨床工学科 **1 同教授    *2 同先端生命医科学研究所 **2 同教授
***2 同特任教授 *3   昭和大学医学部解剖学講座顕微解剖学部門 教授

要  旨
 世界初のインテリジェント表面の開発により,温度を調節するだけで細胞が組織として剥離できる細胞シート工学が先端医療として注目されている.今回,腹膜透析の離脱理由の1つである腹膜傷害への細胞シート工学の効果について検討した.その結果,生体内の腹膜と類似した構造,発現タンパク質を持つ中皮細胞シートの開発に成功した.さらに,中皮細胞シートは壁側腹膜への移植が可能であり,腹膜傷害の再生効果を示した.

キーワード
細胞シート、腹膜透析、腹膜障害、腹膜再生、組織工学

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血管再生の最前線 1.バイオ3Dプリンタを用いた人工血管再生
松林 久美香*1 伊藤 学*2 小林 英司*3 中山 功一*4

*1 株式会社サイフューズ *2 佐賀大学医学部胸部・心臓血管外科
*3 慶應義塾大学医学部臓器再生医学寄附講座 *4 佐賀大学医学部臓器再生医工学講座 教授

要  旨
 我々は,足場を全く含まずに細胞のみで立体的な臓器・組織を作製することが可能な三次元積層技術,ならびにバイオ3Dプリンタを開発した.このバイオ3Dプリンタは,ほとんどの細胞種が試験管内で持つことが知られている自己凝集現象を利用するため,さまざまな組織構築への応用が期待できる.本稿では,本バイオ3Dプリンタを用いた三次元積層方式と積層した組織の特徴,また我々が近年行っている小口径人工血管の臨床開発について紹介する.

キーワード
再生医療、組織工学、バイオ3Dプリンタ、小口径人工血管、人工透析ブラッドアクセス用人工血管

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血管再生の最前線 2.バイオチューブ再生血管の開発 ―バスキュラーアクセスへの応用を目指して―
中山 泰秀** 古越 真耶*

* 国立循環器病研究センター研究所人工臓器部 ** 同室長

要  旨
 感染に対して有利である再生血管は,バスキュラーアクセス人工血管として待ち望まれており,手軽に利用できれば理想的と考える.鋳型を1,2ヵ月皮下に埋め込むだけで,バイオチューブは口径,壁厚,長さをほぼ自在にコントロールした自己コラーゲン管状組織体として得られる.移植後数ヵ月で血管再生が起こり,自己血管と同様に機能する.バスキュラーアクセスへの応用を目指した動物移植実験の取り組みを紹介する.

キーワード
バイオチューブ、生体内組織形成術、人工血管、再生医療、生体内組織工学

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人工腎臓 1.バイオ人工尿細管
斎藤 明*

* 東海大学医学部腎・内分泌・代謝内科 客員教授

要  旨
 現行の透析療法に尿細管の代謝機能を付加するために,中空糸膜モジュールにヒト近位尿細管上皮細胞を単層生着させ,重症急性腎不全などの救命手段として,持続血液濾過液を細胞のある内腔に,血液を外側に灌流させる治療を確立させる.各種尿細管細胞,細胞外マトリックス,人工膜の相互関連期の実験を経たうえで,急性腎不全ヤギの体外循環実験においてバイオ人工尿細管使用群の有意な延命が認められた.治療システムの有効性・安全性・安定性を確認し,臨床研究が待たれる.

キーワード
バイオ人工尿細管、中空糸膜、ヒト近位尿細管上皮細胞、炎症性サイトカイン、体外循環試験

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人工腎臓 2.ウェアラブル透析システム
菅野 義彦*1 三木 則尚*2
*1 東京医科大学腎臓内科学講座 主任教授 *2 慶應義塾大学理工学部機械工学科 教授

要  旨
 我が国の人工透析治療,特に血液透析療法を透析室内で安全に施行するための技術・知識・経験は,世界のトップレベルであることには疑いがない.エリスロポエチンをはじめとする関連薬剤の開発も患者QOLの向上や合併症の改善に大いに寄与しており,臨床応用されて約50年で血液透析療法はほぼ完成の域に近づいている.一方,医学においても各所でナノテクノロジーが導入されており,透析領域にもその端緒となりうる動きが見られる.筆者らのグループを含め,現在3つの研究グループが未来の透析の姿を提唱しているが,筆者らのマイクロダイアライザーは基本的に現在用いられている機材を用いたシステムであり,現在動物実験で耐久性や効率を検討している.週3回の通院や長時間の床上安静,穿刺に伴う疼痛などから解放されることを目標としており,免疫学的な問題や倫理的な問題が少ないために,再生腎臓が臨床応用されるまでのブリッジ医療としての役割を考えて,早期臨床応用を目指している.

キーワード
透析システム、ナノメディシン

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再生腎臓 1.発生プログラムを用いた腎臓再生
山中 修一郎*

* 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科

要  旨
 腎臓再生領域において,iPS細胞から腎組織へと,試験管内での再生技術は目覚ましい進歩を遂げている.しかし,腎代替療法を目指した腎臓再生は,血管系と接続し尿を産生させることが命題である.組織から臓器へと三次元臓器を構築させるには,誘導因子の添加だけでなく,新たな技術の導入が必要になると考える.本稿では異種の腎発生プログラムを利用することで,三次元構造を保った機能的腎臓の再生の試みについて紹介する.初期発生の胚を利用した胚盤胞補完法,後期発生の胎仔を利用した異種胎仔内再生,新たな技術となる前駆細胞置換法など,各手法の解説およびそれぞれの課題と展望について解説したい.

キーワード
キメラ、臓器ニッチ、腎再生、胚盤胞補完法、前駆細胞

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再生腎臓 2.慢性腎不全に対する体性幹細胞療法
福田 昇*1*2*3 丸山 高史*2 松本 太郎*3

*1 日本大学総合科学研究所 教授 *2 日本大学医学部内科学系腎臓高血圧内分泌内科学分野 教授
*3 同機能形態学系細胞再生移植医学分野 教授

要  旨
 我々は,体性幹細胞として間葉系幹細胞(MSC)の機能を持つ脱分化成熟脂肪細胞(DFAT)を細胞源とした再生医療開発を行っている.DFAT細胞移植は腎硬化症モデルの腎機能を改善することを認めた.またDFATはMSCと同様に強力な免疫抑制作用があり,免疫性腎炎モデルへの全身投与にて,免疫抑制作用により腎傷害を改善した.さらに我々は,腎臓内自己修復細胞としての組織幹細胞や前駆細胞を活性化させる抗酸化薬や食品による保存的再生医療の体系化を試みている.

キーワード
体性幹細胞、間葉系幹細胞、脱分化成熟脂肪細胞、慢性腎不全、保存的再生医療

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再生腎臓 3.iPS細胞を用いた腎臓再生
辻本 啓* 長船 健二**

*  京都大学iPS細胞研究所増殖分化機構研究部門 ** 同教授

要  旨
 慢性腎不全に対する腎臓再生医療の開発には期待が集まり,この分野は近年目覚ましく発展している.中でも人工多能性幹細胞(iPS細胞)から腎臓様組織の作製が,さまざまな研究グループから報告されている.胎生期の腎臓原基の主な構成細胞の1つであるネフロン前駆細胞の拡大培養が可能となったことで,ヒト腎臓発生学や疾患モデル研究,機能的な腎臓の再構築に向けて臨床応用を目指した研究の発展がさらに期待される.

キーワード
ネフロン前駆細胞、尿管芽細胞、拡大培養、多能性幹細胞、エリスロポエチン産生細胞

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痛みのClinical Neuroscience
(30)運動器の痛み 2.発育期(こども)における腰痛とそのマネジメント
山下 一太
  徳島大学大学院運動機能外科学
西良 浩一  徳島大学大学院運動機能外科学 教授

要  旨
 近年の疫学調査によって,発育期(こども)の腰痛は少なくないことが分かってきた.大部分は安静による経過観察で症状が軽減するが,中には慢性腰痛に移行し,スポーツ活動や日常生活に支障を来すものも存在する.複数の病院を受診するも腰痛の原因が不明のまま,まん然と通院とスポーツ活動を継続する症例も散見される.医療従事者は適切な診察と画像所見により,腰痛の原因を特定するように尽力しなければならない.

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ノーベル賞と医学の進歩・発展 50,最終回
獲得的免疫寛容の発見 ―バーネット,メダワー―
坂口 志文

大阪大学栄誉教授・京都大学名誉教授

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トピックス
経口抗利尿ホルモン薬の臨床
髙木 博史*1 有馬  寛*2

*1 名古屋大学医学部附属病院糖尿病・内分泌内科
*2 名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学 教授

要  旨
 ・中枢性尿崩症患者に対して経口抗利尿ホルモン薬が使用可能となり,従来の経鼻製剤と比較して患者の利便性が向上した. ・抗利尿ホルモン薬を投与する場合は,投与量の調整,水分摂取方法の指導を患者ごとに個別に行い,患者のQOL改善と副作用発現防止に留意する必要がある.

キーワード
バソプレシン、中枢性尿崩症、デスモプレシン、口腔内崩壊錠

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